タレントマネジメントとヒューマンリソースマネジメントとは?違いや注目人事マネジメントも解説

人事マネジメントは古くより存在し、企業の戦略を実現し、経営目標を達成するために不可欠な要素ですが、近年の環境の変化とともに、人事マネジメント手法のトレンドにも変化が生じています。

今回は、従来より用いられてきたヒューマンリソースマネジメント(HRM)と、比較的新しい手法であるタレントマネジメントの違いに言及しつつ、それぞれの特色について紹介します。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、従業員の資質、スキル、経験などの情報を一元管理して、組織横断的に最適な人員配置や人材開発を行う人事マネジメントのことです。従来の人事情報として管理していた、従業員の基本情報(住所、氏名、年齢、学歴、職務経歴など)に加えて、上記のような情報を管理し、活用します。

タレントマネジメントの必要性

日本では、終身雇用制や年功序列が採用されていたため、人材の流動性は低い状態でした。
このような人事制度のもとにおいては、人材をどのように活用するかという発想は乏しく、従業員を会社のニーズにどのように合致させるかということが重視されていた時代です。

しかし、働きかたの多様化や労働市場の流動化が進むにつれ、従来のような人事マネジメントがうまく機能しないことが増えました。

上記のグラフからも分かるとおり、2013年と2017年の比較でも転職希望者の数が概ね増加傾向にあります。

さらに近年、企業買収やグループ内の事業再編など、組織の大幅な変更が活発に行われています。

新しい会社組織や事業の形態に合わせて最適な人材を配置することが重要視されるようになり、終身雇用制度も終わりを迎えることで、本格的に従来の人事マネジメントが機能しなくなりました。

こういった背景から、次第にタレントマネジメントが注目を集めるようになりました。

厚生労働省が発表している「平成30年版 労働経済の分析」によると、2012年時点では導入済み企業は2.0%だったのに対し、2017年度には7.1%に増加しています。
検討中企業も含めると25.1%の企業が注目しており、日本企業でも年々導入企業は増加傾向にあります。

さらに売上高が1兆円規模になると導入検討企業は60%を超え、市場規模の大きい大企業ほど従来の人事マネジメントから脱却していることが一目瞭然です。

タレントマネジメントに期待できる効果

タレントマネジメントに期待できる効果は、以下のようなものがあります。

  • 人材の適正配置
    タレントマネジメントの導入により、人材を適正に配置することができるようになります。個人の能力、スキル、才能がデータ化され一元管理されることにより、個々の従業員を客観的に評価することができるからです。

    従来の人事マネジメントのような、学閥、年齢などのバイアスのかかった判断から解放され、新しい事業や部署、役職にも最適な人材を配置することができるようになります。

  • モチベーション維持と離職防止
    個々の従業員の能力を最大限に発揮してもらうことで、モチベーションの維持や向上につながります。モチベーションが向上することで、業務パフォーマンスの向上が期待できるほか、モチベーション低下に伴う離職の防止にも寄与します。

  • リーダーの育成に活用
    タレントマネジメントでは、従業員を選抜して育成する特徴があります。よって、将来の幹部候補であるリーダーの育成にも最適な手法です。

タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントを行う際には、従業員のデータの管理や運用が必要になり、専用のタレントマネジメントシステムを用いて実施されるのが一般的です。

タレントマネジメントシステムの主な機能

主な機能は以下の通りです。

  • 従業員情報管理
  • チーム・組織管理
  • 目標管理
  • 業務経歴管理
  • 人事評価
  • スキル管理
  • アンケート
  • 診断・分析

メリット


タレントマネジメントシステムを導入するメリットは、以下のようなものがあります。

  • 人事業務全般が効率化される

    データを一元的に管理するため、人事業務全般が効率化されます。採用、研修のような定期的に行われるイベントや、給与計算・勤怠の管理などの日常業務まで幅広く活用することができます。

  • データに基づく客観的な評価ができる

    タレントマネジメントシステムを導入することで、データに基づく客観的な評価が可能になるため、社員のモチベーションアップにもつながります。

  • 個々の従業員の能力が把握できる

    個々の従業員の目標や業務経歴、スキルや経験などが一元的に把握できるため、適正な人材配置をすることができます。新しい役職や事業に対しても、ふさわしい人材を選別することができます。

  • 人材育成や抜擢が客観的に行え、幹部候補が把握できる

    人材育成や抜擢を、客観的なデータを根拠として行うことができるようになります。また、将来の幹部候補となる人材を事前に把握することができます。幹部候補の人材に対して、集中的な教育を施すなどの施策も可能になります。

デメリット


タレントマネジメントシステムを導入するデメリットは、以下のようなものがあります。

  • 導入コストが発生する

    タレントマネジメントシステムの導入には費用がかかります。サブスクリプション型にするか、永続ライセンス型にするかなど、料金形態についても検討する必要があります。

  • データ準備が大変である

    タレントマネジメントシステムには、従来の人事システムの情報に加えて、多種多様な情報が集約されます。従業員一人ひとりが導入目的を理解して、正確でタイムリーな情報入力をする必要があります。

    従業員のシステム導入の意義に関する理解が不十分であると、正確かつ十分なデータを集めることが難しくなります。

  • 制度変更に伴う混乱を招く

    タレントマネジメントシステムの導入伴い、従来の人事制度を変更する場合、制度変更に伴う混乱を招く恐れがあります。事前に社内の説明会などを開催し、新制度やタレントマネジメントシステムの意義について理解を深めたうえで、導入する必要があります。

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは

続いて、ヒューマンリソースマネジメント(HRM:Human Resource Management)について説明します。HRMとは、人材を経営資源として捉えて、人材(Human Resource)を有効活用する仕組みを構築・運用することです。

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)の必要性


経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われており、組織が目指す目標や戦略の実現には、「ヒト」の存在が不可欠です。
よって、組織が目標を果たすためには、「ヒト」を貴重な経営資源と認識し、重要課題として取り組まなければなりません。そこで、ヒューマンリソースマネジメント(HRM)が必要になります。

例えば、企業戦略を実現するために必要な人的資源の需要を予測し、予測に基づいた採用・教育・配置を行う、というように、リソースを最適化し、成果を最大化することを目指します。

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)に期待できる効果

人材開発の促進

ヒューマンリソースマネジメントを導入することにより、人材開発やキャリア実現が促進されます。例えば、従業員の今後のキャリアの希望について定期的なヒアリングを行うことで、ミスマッチを防止したり、長期的な育成計画を立てることができます。

ヒューマンリソースマネジメントは、従業員の資源としての特性を理解し、適切に管理することで、組織とのマッチングを高め、人的資源としての便益を最大化することを目指します。

組織の目標達成

ヒューマンリソースマネジメントでは、組織戦略の実現や目標達成のために、人的資源を適正に採用、配置、育成し、成果を最大化することを目指しています。

組織戦略の実現や目標達成のために、どんな人材が、何名、いつまでに必要なのかということを、目標から逆算して計画し、必要な人材の採用・育成・配置を行うことで、目標達成を人材面から強力にサポートします。

タレントマネジメントとヒューマンリソースマネジメント(HRM)の相違点

和歌山大学の厨子直之准教授によれば、タレントマネジメントとヒューマンリソースマネジメントの相違点は以下の通りです。

タレントマネジメント ヒューマンリソースマネジメント
有能な人材にフォーカスする 全従業員を管理対象とする
右記に加えて、上級管理職の支援が必要 人事部やライン管理職の支援が必要
差別化・細分化を志向する 平等主義を志向する

タレントマネジメントとHRMは、従業員のスキルや経験を一元的に管理して、組織の目標を達成することを目指す点、適材適所を志向する点では一致しています。

その一方で、タレントマネジメントは、有能な人材に焦点をあてて管理しますが、ヒューマンリソースマネジメントは、全従業員を等しく管理対象とするところが最大の相違点です。

また、タレントマネジメントでは、特に上級管理職の支援が必要であるとされています。これは、いわゆる抜擢人事などを想定した必要条件であり、例えば、年功序列制度を脱却した大胆な人事配置を行うためには、人事権を持つ上級管理職の支持が不可欠であるためです。

その他注目人事マネジメント

ヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)とは

ヒューマンキャピタルマネジメント(HCM:Human Capital Management)は、日本語では、人的資本管理と呼ばれています。HRMに近い概念ですが、相違点もあります。
HRMが人材を経営資源として捉えるのに対して、HCMでは、人材の能力やスキルを資本として捉えます。

HRMは、人材と組織の双方が利益を獲得することを目指しますが、HCMは業績の最大化を目指します。

まとめると、HRMでは、人材を限りある資源として扱いますが、HCMでは資本として扱い、リターンの最大化を目指して投資します。

ヒューマン・エクスペリエンス・マネジメント(HXM)とは

ヒューマン・エクスペリエンス・マネジメント(HXM:Human eXperience Management)とは、会社・人事が実現したいことと従業員一人ひとりの想いをつなぐ新しい人材マネジメントのスタイルです。

SAP ScuccessFactorsが提唱、推進している概念であり、従来の人材管理(HRM/HCMなど)の良い部分は取り入れつつ、企業の持続的な成長のために、従業員の生の声を重視し、あらゆる業務におけるユーザー体験を最良のものにしようという取り組みです。

まとめ


タレントマネジメントとは、従業員の資質、スキル、経験などの情報を一元管理して、組織横断的に最適な人員配置や人材開発を行う人事マネジメントのことです。

ヒューマンリソースマネジメント(HRM)とは、人材を経営資源として捉えて、人材を有効活用する仕組みを構築・運用する人事マネジメントのことです。

タレントマネジメントとHRMは、多くの部分で共通しています。例えば、従業員のスキルや経験を一元的に管理して、組織の目標を達成することを目指す点では一致しています。一方で、タレントマネジメントでは、HRMに比べて、一部の優れた従業員を選抜する傾向が強いという点が異なります。

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