商社がECサイトを構築する理由は出荷コストの削減にあり 

機械要素部品や電子部品、FA機器などの製造業を得意としている当社ですが、我々のお客様には大きく分けてメーカーと商社があります。主なサービスのひとつとして商品マスタの構築がありますが、その目線においてこの業界の商社は戦略上3つのタイプに分類することができます。 

そのタイプ別の動きから昨今の戦略を説明していきたいと思います。 

3つの商社タイプと特徴 

まず、BtoB製造業の商社は次の3つのタイプに分類することができます。 

  1. ECオープンタイプ 
  2. EDIクローズドタイプ 
  3. 対面営業タイプ 

ECオープンタイプとは、自社で取扱う商品すべてを、価格だけに留まらず在庫や納期、送料といった商品にまつわるあらゆる情報を誰もがアクセスできるインターネット上に公開してある商社のことです。 

企業例:オレンジブック(トラスコ中山株式会社)、モノタロウ(株式会社MonotaRO)、MISUMI-VONA(株式会社ミスミグループ本社)、ASKUL(アスクル株式会社)など 

EDIクローズドタイプとは、自社で取扱う商品すべてを、価格だけに留まらず在庫や納期、送料といったあらゆる情報を、取引のある企業だけがアクセスできるように制限をかけた状態でインターネット上に公開してある商社のことです。③の対面営業タイプの商社がDXの成功によりEDIクローズドタイプになることがここ数年増えている傾向にあります。 

対面営業タイプとは、従来からの商社の手法です。商品に関する情報をインターネット上に公開せず、営業マンを介して価格や在庫、納期、送料といった情報を提供する商社のことです。 

 商品情報の配信 アクセス 受発注 サポート 
ECオープンタイプ インターネット 誰でも可 Web Web&サポートセンター 
EDIクローズドタイプ インターネット 取引のある顧客 Web 担当窓口 
従来タイプ 営業マン 不可 Web/メール など 営業マン 

この表で着目すべき点は3点あります。 

  1. 商品情報の配信では、対面営業タイプからEDIクローズドタイプへの移行で、営業マンからインターネットに切り替わっていること 
  2. 商品情報の配信で、ECオープンタイプとEDIオープンタイプの違いは、アクセス権限のみであり本質的な差はないこと 
  3. ECオープンタイプは、だれもがアクセス・注文できるからこそ、サポート対応もWebだけでは足りずサポートセンターを設け多くの人間を雇用していること 

商品情報の配信とは、自社の取扱商品を顧客に認知・興味喚起・購買の意思決定を促進するために発生するコストです。一般的に製品紹介サイトや総合カタログといった媒体などがあります。 

対面営業タイプでは営業部や広報部といった人間の人件費で実現しています。一方EDIクローズドタイプとECオープンタイプでは、同様のことをシステムを活用し自動化することで人件費の削減に成功しています。 

ECオープンタイプとEDIクローズドタイプの違いは、一般公開されているのか取引先に限定しているのか、といったアクセス権限の違いだけであり、「商品情報を配信するプロセス」という側面において本質的な差はないのです。 

一方でECオープンタイプは一般公開されているからことでのEDIクローズドタイプの違いがあります。それはサポート対応になります。 

EDIクローズドタイプは、アクセス自体を取引先だけに限定しています。つまり同じ業界で同じ専門用語で仕事をしている人たちだけを対象にしているためサポート対応も比較的簡易で済みます。 

たとえば、年配の方と若者の場合でスマートフォンのサポート対応の質や量が異なることは想像に難くないでしょう。そもそもの前提知識があるかどうかでサポート対応は変動するのです。そしてそもそもの前提知識があるかどうかはターゲットとしているユーザー層に影響を受けます。 

一方でECオープンタイプでは、一般公開されているため取引の有無にかかわらず法人(場合によっては個人も)がアクセスし、閲覧・注文することが可能です。そのため前提知識がない人からのトランザクション(アクセス数や注文数)も多いためサポート対応においても網羅性が求められるのです。そのため、Webサイトだけではターゲット全体を網羅できないのでサポートセンターをつくっているのです。 

BtoCのECサイトで有名なAmazonは、できるだけWeb上でユーザー自身で解決してもらおうと情報提供の品質を高めています。そのAmazonでも実はサポートセンターは存在しているのです。 

なおEDIクローズドタイプのサポート対応がWeb化できていない理由の一つとして、いままでの商流が対面をメインとしたサポート対応であったために、なかなか切り替えられないといったことが挙げられます。 

つまり、ECサイトというチャネルがある企業においても、なんでもかんでもWeb化/システム化できるわけではないということです。大口顧客には担当営業を設置したり、質問対応や発注時に不備があればコールセンターが対応する、といったようなヒューマンリソースを活用して複合的にサービスが展開されているのです。 

BtoB製造業商社の戦略 

BtoB製造業の商社の打ち手の一つとして「1出荷当たりコスト」をできるだけ下げることがあります。出荷コストを下げ、価格メリットを提示し続けることが業界内の競争力を高め、売上や利益に反映されるからです。 

1出荷当たりコストとは、物流コストと販売コストの2つに分類することができます。 

  • 物流コストとは、倉庫保管料やトラック・チャーター機などの輸送費用、それらに関わる社内の人件費、物流管理などのシステム費用などがそれに該当します。 
  • 販売コストには以下の3つがあります。 
    • A. Webサイトやカタログなどの商品情報を提供する配信コスト 
    • B. 発注と決済などを行う受発注コスト 
    • C. 質問対応、アフターフォローを行うサポートコスト 

前述の表で当てはめると、下記のようになります。 

 商品情報の配信 
A.配信コスト
アクセス 受発注 
B.受発注コスト
サポート 
C.サポートコスト
ECオープンタイプ インターネット 誰でも可 Web Web&サポートセンター 
EDIクローズドタイプ インターネット 取引のある顧客 Web 担当窓口 
従来タイプ 営業マン 不可 Web/メール など 営業マン 

配信コストとは、自社取扱商品を顧客に認知・興味喚起・購買の意思決定を促すために必要なコストです。BtoB業界においては、カタログがまだまだ強力なメインツールとなっています。 

  • 製品紹介サイト 
  • カタログ/リーフレット など 

受発注コストとは、ユーザーが商品を発注し、企業が受注処理をするためのコストです。自社内でのみ運用される受注システムは現在では多くの企業に導入されていますが、ユーザー自身で注文→システムで受注処理をするシステムは必ずしも多くの企業で導入されているわけではありません。 

メールやFAXで届いた注文を人間が作業するのと自動で処理されるのとではコストの差が大きくなります。 

サポートコストとは、ユーザーのお問い合わせ対応や、注文内容に不備があった際に個別に連絡を取って不備を修正するために発生するコストです。個別対応となるケースが多いため人間による業務が多いですが、よくある問い合わせ内容などに対しては、FAQの充実やチャットボットなどの導入によりコストを削減することが可能です。 

従来よりこの販売コストは営業部、広報部、受注センターといったたくさんの人間が必要な部門でありました。オレンジブックやモノタロウといったECオープンタイプの企業は3つの販売コストをできるだけWeb化システム化を継続すること1出荷当たりコストの削減を継続しているのです。 

昨今、対面営業タイプの企業が配信コストをデジタル化、つまりカタログベースの商品情報提供から「商品マスタのDB化とECサイトの構築」といった配信コストの削減に取り組んでいます。全社的なDXプロジェクトという位置づけで出荷コストの削減に取り組んでいる企業が増えている印象です。 

背景には経産省が提唱している2025年の崖はもちろんですが、BtoB製造業界においてもミレニアル世代やZ世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代の就業人数が相対的に増加し、ある程度発注権限のある役職に就くような年齢になり始めていることが想定されます。 

そういう意味でも、従来型の販売チャネルで充分であった対面営業型の企業もDXの必要性について検討する機会であるともいえます。 

商品マスタのDB化とECサイトの構築をすると、配信コストにどの程度影響があるのだろうか、といったことを考えられる方も多いと思います。当社ではECサイトを構築した場合の効果予測や具体的な始め方など、多様なサポートを行っております。 

無料相談も受け付けていますのでご興味ある方はご連絡ください。