キャッチコピーやスペック、画像や動画などの商品情報を効率的に一元的に管理するためのシステムとしてPIMがあります。しかし良いと考えてPIMを導入したにも関わらず想定通りの結果を得られない、というケースが残念ながら存在します。
実績のあるシステムベンダーに依頼し要件通りに開発したはずなのにうまくいかないのにはどんな理由があるのか、を解説していきます。
そもそも、PIMを導入する理由とは、
PIMは日本語で「商品情報管理システム」と訳される通りシステムであり、その中でもデーターベースシステムに分類されます。商品(商品コード)を軸にテキストやスペック情報、画像・動画素材やマニュアルといったさまざまなデータ(拡張子)を格納できるデータベースです。データベース自体は、何かの目的を達成するための手段として導入されます。つまりPIM導入の成功失敗の基準は、目的が達成されたかどうかfig.1になります。
ではPIMの本質はデータをシステム的に一元管理することで、
- 業務の属人化を抑止する
- 間違いないデータをタイムリーに活用できる
点にあります。
それは以下の機能をが持ち合わせているからです。
- 商品を軸に多様な拡張子を一元的に管理できる機能
- さらに多言語の情報を一元的に管理できる機能
- いつ、何を、どのように変更したかの履歴を管理できる機能
- Webサイトへの連携やカタログの自動作成など、媒体作成を支援する機能
これらの機能を活用し「新たにECサイトを構築する」「今は国ごとで別々のWebサイトからグローバルサイトを構築する」といったような目的を達成するのです。
PIMプロジェクトの3つの落とし穴
さて大きな目的を達成するためにPIMを導入するのですが、このプロジェクト失敗を招いてしまうかもしれない落とし穴を紹介します。
- PIMプロジェクトを「システム案件」と考えている
- 商品マスタの構築は難しいものではないと考えている
- 商品マスタの構築の責任分界を曖昧にしている
1. PIMプロジェクトを「システム案件」と考えている
PIMはデータベースシステムなので、システム案件と考えてしまいがちですが実はそうではありません。
PIMはデータベースというシステムだけのことを指すのに対して、PIMプロジェクトはそのデータベースに入れる商品マスタの構築やデータのクレンジング、またデータベースを活用したWebサイトやカタログの制作、さらにそれらを同時に立ち上げるためのマネジメントや業務設計など、関係する範囲は幅広く、その分難易度も上がりますfig.2。
つまり、PIMプロジェクトはデータベースを手段として利用する「業務改善プロジェクト」であり、だからこそシステム案件ではないと言えるのです。
2. 商品マスタの構築は難しいものではないと考えている
我々の顧客は数千、数万以上の商品を販売している製造業のメーカーや商社が多くなっています。どこの企業でも商品マスタは持っていますが、PIM向けの商品マスタを持っているかというと決して多くはないのが実態です。基幹システムやPDMなどのデータベースで商品情報を持っているから、きっと簡単にデータ移行できるはずだと多くの方が主張されます。しかし経験上、簡単にデータ移行できたことはほとんどありません。
さてその理由ですが、より良い業務のために行う「現場社員のちょっとした工夫の積み重ね」が背景にあります。当時は合理的な理由で行っていたものが、周囲の環境が変化したことで“結果として”非合理な状態になってしまっているのです。
たとえば、
- 商品拡大に対応するために商品情報をExcelの関数やマクロで都度対応してきた
- システム制限により、商品名を短縮してメーカーの正式名ではなく自社アレンジしている
- 画像データは、カタログにあるものが最新でそれを都度Webに利用している
これらの長年の事業拡大の結果としての非合理な状態を、PIMに格納できる合理的な状態に戻すことが商品マスタ構築の業務のひとつなのです。したがって、現在の状態とその背景、本来どうあるべき状態かをお客様が社内で見つけていく作業となります。
3. 商品マスタの構築の責任分界を曖昧にしている
商品マスタの構築をだれがやるのか(責任分界)曖昧にしていることで、プロジェクト失敗の可能性を上昇させるてしまいます。PIMシステム自体の開発者はわかりやすいですが、商品マスタの構築の作業者は実は曖昧になりやすいです。
|
判断/決定 |
開発・作業 |
システム |
自社 |
システム会社 |
商品マスタの構築 |
自社 |
??? |
さらにPIMプロジェクトをシステム案件と考えてしまっていると、必ずと言っていいほど「商品マスタの構築の作業者」が抜け落ちてしまいます。また商品マスタの構築を簡単なものと考えていると、この部分を自社社員が空いた時間でやると安直に決定してしまうことがあります。しかし、
1万点の取り扱い商品×20項目=20万データ とした場合、
※項目とは、商品情報の種類のことで、「商品名、仕入れ先名、代表画像、特徴文、サイズ、重量、耐荷重、Rohs対応 など」といったようなものです。1商品当たり100項目となる場合も少なくありません。
このうち10%の確率でデータのクレンジングが発生するとしても、クレンジングが必要な数量は2万点ともなります。それを本来の業務がある社員たちで期間内に実行可能か、と考えると相当にハードルが高いものとなります。
こういったように、PIMというシステムを理解するのは比較的容易ですが、PIMプロジェクトの実行は大変に手間と労力と社内調整が発生するものです。
今回は陥りやすいPIMプロジェクトの落とし穴を紹介しました。当社ではPIMプロジェクトの専門部署がしっかりとサポートする形でサービスを提供しています。過去に失敗してしまった方、検討中でリスクポイントを知っておきたい方、当社では様々なご提案をしていますのでお気軽にお問い合わせください。