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2022.04.20
商社がECサイトを構築する理由は出荷コストの削減にあり
機械要素部品や電子部品、FA機器などの製造業を得意としている当社ですが、我々のお客様には大きく分けてメーカーと商社があります。今回のレポートでは、商社に焦点を当てていきます。
当社の主なサービスのひとつに商品マスタの構築がありますが、その目線において製造業の商社は、戦略上3つのタイプに分類することができます。
この3つのタイプ別の動きから、昨今の戦略を説明していきたいと思います。
3つの商社タイプと特徴
まず、BtoB製造業の商社は次の3つのタイプに分類することができます。
- ECオープンタイプ
- EDIクローズドタイプ
- 対面営業タイプ
① ECオープンタイプ
自社で取扱う商品すべての、価格・在庫・納期・送料といった商品にまつわるあらゆる情報を、
誰もがアクセスできるインターネット上に公開してある商社のことです。
企業例:
オレンジブック(トラスコ中山株式会社)、モノタロウ(株式会社MonotaRO)、MISUMI-VONA(株式会社ミスミグループ本社)、ASKUL(アスクル株式会社)など
② EDIクローズドタイプ
自社で取扱う商品すべての、価格・在庫・納期・送料といったあらゆる情報を、
取引のある企業だけがアクセスできるように制限をかけた状態でインターネット上に公開してある商社のことです。
③の対面営業タイプの商社が、DXの成功によりEDIクローズドタイプになることが、ここ数年増加傾向にあります。
③ 対面営業タイプ
従来からの商社の手法です。
商品に関する情報をインターネット上に公開せず、営業マンを介して価格・在庫・納期・送料といった情報を提供する商社のことです。
上の表で着目すべき点は3点あります。
- 商品情報の配信では、対面営業タイプからEDIクローズドタイプへの移行で、営業マンからインターネットに切り替わっていること
- 商品情報の配信で、ECオープンタイプとEDIオープンタイプの違いは、アクセス権限のみであり本質的な差はないこと
- ECオープンタイプは、だれもがアクセス・注文できるからこそ、サポート対応もWebだけでは足りずサポートセンターを設け多くの人間を雇用していること
商品情報の配信とは、自社の取扱商品を顧客に認知・興味喚起・購買の意思決定を促進するために発生するコストです。
一般的に製品紹介サイトや総合カタログといった媒体などがあります。
対面営業タイプでは、営業部や広報部といった人間の人件費で実現しています。一方EDIクローズドタイプとECオープンタイプでは、同様のことをシステムを活用し自動化することで、人件費の削減に成功しています。
ECオープンタイプとEDIクローズドタイプの違いは、一般公開されているのか取引先に限定しているのか、といったアクセス権限の違いだけであり、「商品情報を配信するプロセス」という側面において本質的な差はありません。
一方で、ECオープンタイプは一般公開されていることから生じる、EDIクローズドタイプとの大きな違いがあります。
それは、サポート対応です。
EDIクローズドタイプは、アクセス自体を取引先だけに限定しています。つまり同じ業界で同じ専門用語を用いて仕事をしている人たちだけを対象にしているため、サポート対応も比較的簡易で済みます。
たとえば、年配の方と若者の場合で、スマートフォンのサポート対応に必要な質・量が異なることは、想像に難くないでしょう。
そもそもの前提知識があるかどうかで、サポート対応は変動するのです。そして、そもそもの前提知識があるかどうかは、ターゲットとしているユーザー層に影響を受けます。
一方ECオープンタイプでは、一般公開されているため取引の有無にかかわらず法人(場合によっては個人も)がアクセスし、閲覧・注文することが可能です。
そのため、前提知識がない人からのトランザクション(アクセス数や注文数)も多く、サポート対応においても網羅性が求められます。これに対応するため、Webサイトだけではターゲット全体を網羅できないので、サポートセンターをつくっているのです。
BtoCのECサイトで有名なAmazonは、できるだけWeb上でユーザー自身で解決してもらおうと情報提供の品質を高めています。そのAmazonでも実は、サポートセンターは存在しているのです。
なお、EDIクローズドタイプのサポート対応がWeb化できていない理由の一つとして、いままでの商流が対面をメインとしたサポート対応であったために、なかなか切り替えられないといったことが挙げられます。
つまり、ECサイトというチャネルがある企業においても、なんでもかんでもWeb化/システム化できるわけではないということです。大口顧客には担当営業を設置したり、質問対応や発注時に不備があればコールセンターが対応する、というように、ヒューマンリソースを活用して複合的にサービスが展開されているのです。
BtoB製造業商社の戦略
BtoB製造業の商社の打ち手の一つとして、「1出荷当たりコスト」をできるだけ下げることがあります。出荷コストを下げ価格メリットを提示し続けることが、業界内の競争力を高め、売上や利益に反映されるからです。
1出荷当たりコストとは、物流コストと販売コストの2つに分類することができます。
- 物流コスト:
倉庫保管料、トラック・チャーター機などの輸送費用、それらにかかわる社内の人件費、物流管理などのシステム費用 - 販売コスト:以下の3つがある。
A. Webサイトやカタログなどの商品情報を提供する配信コスト
B. 発注と決済などを行う受発注コスト
C. 質問対応、アフターフォローを行うサポートコスト
配信コストとは、顧客に自社取扱商品の認知・興味喚起・購買の意思決定を促すために必要なコストです。
BtoB業界においては、カタログがまだまだ強力なメインツールとなっています。
- 製品紹介サイト
- カタログ/リーフレット など
受発注コストとは、ユーザーが商品を発注し、企業が受注処理をするためのコストです。
自社内でのみ運用される受注システムは現在では多くの企業に導入されていますが、「ユーザー自身で注文→システムで受注処理をする」システムは、必ずしも多くの企業で導入されているわけではありません。
メールやFAXで届いた注文を人間が手作業で処理するのと、システムによって自動で処理するのとでは、コストの差が大きくなります。
サポートコストとは、ユーザーのお問い合わせ対応や、注文内容に不備があった際に個別に連絡を取って不備を修正するために発生するコストです。
個別対応となるケースが多いため人間による業務が多いですが、よくある問い合わせ内容などに対しては、FAQの充実やチャットボットなどの導入によりコストを削減することが可能です。
従来よりこれらの販売コストは、営業部、広報部、受注センターといったたくさんの人間が必要な部門でした。
オレンジブックやモノタロウといったECオープンタイプの企業は、この3つの販売コストをできるだけWeb化・システム化することにより、1出荷当たりコストの削減を実現しているのです。
近年では、対面営業タイプの企業が配信ツールをデジタル化、つまり、カタログベースの商品情報提供から「商品マスタのDB化とECサイトの構築」に移行することにより、配信コストの削減に取り組んでいます。全社的なDXプロジェクトという位置づけで、出荷コストの削減に取り組む企業が増えている印象です。
こうした動きの背景には、経産省が提唱している「2025年の崖」はもちろん、BtoB製造業界においてもミレニアル世代やZ世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代の就業人数が相対的に増加し、ある程度発注権限のある役職に就くような年齢になり始めていることが想定されます。
そういう意味でも、従来型の販売チャネルで充分であった対面営業型の企業も、DXの必要性について検討する機会であるともいえます。
商品マスタのDB化とECサイトの構築をすると、配信コストにどの程度影響があるのだろうか、と気になるご担当者様も多いと思います。
当社では、ECサイトを構築した場合の効果予測や具体的な始め方など、多様なサポートを行っております。
無料相談も受け付けていますので、ご興味ある方はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。